皆さんこんにちは。インテリアコーディネーター&窓装飾プランナーのあまんだ・ら・かまんだらです。
2回に渡って「大阪・関西万博で出会ったファブリック」について書いたブログ。
字数制限ギリギリまで書き込んだつもりでしたが、アップ後に大物を忘れていたことに気が付きました。
まさにファブリックがメインテーマのパビリオン「フィリピン館」!
インテリアコーディネーター&窓装飾プランナーたるものが….パビリオン完全制覇まであと3つになって、なんたる不覚。
これを見ずにして万博のファブリックは語ってはいけない!…ぐらいファブリックの魅力が沢山つまっっています。
ということで、今回は「フィリピン館」をご紹介します!
目次
フィリピン館の外観デザイン
フィリピン館は、長蛇の列のアメリカ館&フランス館のお向かいにあり、リゾート感あふれる建物のデザインが目を引きます。
(建物についても掘り下げるととても興味深いのですが…話がそれてしまうので最後にちょこっと書きました。)
並ぶところにはミストやテントがあるだけでも夏場は助かりますが、時間によっては影が少なくなるので、そこは南国に行ったと思ってしばし我慢….
ただ、人が結構並んでいそうでも、結構まとまって入場できるので見た目よりもスムーズには入れます。
エントランス~ウェイティングゾーン
外壁の窓や入口のドアもまるで織物のショーケースのよう。
建物の横側の窓にはフィリピン各地で収集した212枚の伝統的な手織物がファブリックパネルとして展示されています。
待機列そばの籐のベンチも素敵なのですが、その壁の上の方にもぜひ注目してみてください!

フィリピン館のテーマ「WOVEN(織物)」
フィリピン館のテーマは「WOVEN(織物)~自然、文化、共同体:よりよい未来をともに織りなす~」。
フィリピンの伝統工芸である「織物」を通じて多様性とつながりの精神を表現しているそうです。
「WOVEN=織物」まさに、このブログのテーマそのもの。
壁に掲げられたWOVENのロゴも織物のパッチワークのようなデザインでフィリピンの織物文化の豊かさが垣間見えます。
ウェイティングゾーンの演出がきれいでテーマパークのアトラクションの様なワクワクするナレーションに期待が高まります。
メイン展示「織物の森」
ドアが開くと天井が高い展示空間が広がります。
メイン展示の「織物の森」ではフィリピンの18地域の魅力が長さ3.4mのタペストリーで紹介されています。
タペストリーのベースはセブ島の職人が6カ月かけて作ったものだとか。
マニラ麻として知られているアバカ(Abaca)を使った伝統的な織物など、サステナブルな植物の繊維やアップサイクルされた布地からできています。
キラキラする樹脂のプレートでサーディン・ラン(イワシの大群)を表現
スタッフの方に「あまりに素晴らしかったので、2回目来ちゃいました!」とスタッフの人に話しかけると、「パイナップルの繊維でできているのもあるよ」とまだ知らなかった情報を教えてくれました。
一枚一枚が全く異なるデザインで、立体的なモチーフやビーズや刺しゅう、貝殻や鳥の羽やモコモコのウールなど装飾もバラエティに富んでいます。

上は日本でも有名なリゾート地・セブ島があるビサヤ地方のタペストリー。
その島々の形のデザインにビーズやゴールドの刺繍がきらびやかな装飾が施されています。
ちなみに上の方の建物があるのはこのエリアで人気の観光スポットでクリスタル・コーブ島という個人所有の島。
入り江や洞窟が美しく、建物や施設があるテーマパークのような所で、ツアーなどで上陸できるものの、見るためには入場料が必要だそうです。
教会もゴールドの刺繍やスパンコールでキラキラ
その地域の美しい自然や風景、歴史的な建物など、その織物のひとつひとつに地域独自の文化・伝統や魅力が描かれているので見ているだけで楽しい展示です。
立体的な木の実
立体的な滝にウミガメの映像も
刺繍で装飾が施された華やかな民族衣装
下は、フィリピン初・ユネスコ世界遺産(自然遺産)の「トゥバタハ岩礁自然公園」があるミマロパ地方のタペストリー

そのためこちらのタペストリーは、サンゴ礁をイメージしたデザイン。異なる色や素材の生地を使って多種多様なサンゴが立体的に表現されています。。
ちなみにこのエリアの「トゥバタハリーフ」はサンゴだけでなく熱帯魚やウミガメなど多彩な海洋動植物見ることができる人気のダイビングポイントだそうです。
プロジェクターのスクリーンとして使われているものも多く、映像はそれぞれ異なるもの。
滝が流れていたり、花火があったり、サーフィンしているものもありました。

▲海の表情も昼間や夕方なぞ時間帯で色合いに違いが。左上の白く光っている部分にはサーフィンしている映像が!
ずっと波に乗ってます!白波は羽毛で表現されています。
右はフィリピン南部にあるミンダナオ島・ソクサージェン地方のタペストリー
鍾乳洞のように見える場所にスポットライトが当たって幻想的。
ピンクの花はひとつひとつ違う表情。立体的な花弁がグラデーションで可愛い
先住民やイスラム教徒など多民族が共存しているミンダナオ島ならではのタペストリー
刺繍が美しい伝統模様
こんなファブリックの大物がいたとは!
もっと早く行くべきだったと後悔しました。
ど派手な演出ではないので、興味がわくかどうかは個人差があるかもしれませんが….
一枚一枚が芸術品。アートに興味がある方、必見です。
フィリピンの伝統的な染織
詳しい説明がなかったので掘り下げて調べてみました。
少数民族の民族衣装として使われることが多いフィリピンの伝統的な染織は、「バックストラップ織機(Back-Strap Loom)」といったシンプルで原始的な織機で作られています。
それぞれの織物の素材やデザインや色、技法は民族によって異なり、古くから女性の仕事として、各部族・家族ごとに受け継がれてきました。
山あいの地域では山や棚田がモチーフになっていたり、海が近い地域では貝殻を使ったりとそれぞれに特色があります。
パビリオン出口近くのグッズコーナーの壁に、伝統的な織物を使ったファブリックパネルがありました。
画像下の右と左のパネルがおそらくティナラク例えばフィリピン南部ミンダナオ島のタペストリーはティボリ族 (T’boli) のティラナク (T’nalak)。
マニラ麻できた赤・黒・生成りの三色が基本で、日光や雨にも強く、耐久性に優れた絣の織物(イカット)です。
夢のお告げを織り込むという独特の文化があり、文字のない時代には、人々の願いや神話などをデザインに込めることで代々伝えてきたとか。
ティラナクを織る作業は神聖な女性の仕事とされ、織り機には魔除けの鈴が付けられているそうです。
マニラ麻の繊維を取る所から始まり、染色・織りを経て一家総出で時間をかけてやっと完成する一枚の布。
「織物で伝える」「織物に思いを込める」
アジア、アフリカ、南米…と場所は違えど、人間考えることは同じなんだなぁとここでも改めて実感しました。
パビリオン情報とまとめ
建物の外装には手編みのラタン(籐)パネルを使用した南国らしさ満載のパビリオン。
見た目も涼やかで素敵なんですよね。脇にはラタンのベンチもあって、待っている間も南国リゾート地にいる気分になれます♪
ちなみに、構造体は鉄骨とチリ館などでも使われていたCLT(Cross Laminated Timber)がベース。
様々な制約がある中、リユースも考え、様々な色々な工夫を重ねて施工されたとのこと。
パビリオンは万博終了後にはフィリピンで「第二の人生」を送る予定だそうです。
入場直後のウェイティングゾーンでは、細長い布が沢山垂れ下がったスクリーンにワクワクするライティングとナレーションが印象的でした。
フィリピンが島国なのは当然知っていましたが、改めて島の数が7000を超えると聞いて驚きました。
また、フィリピン館は遊べたり映えスポットも多い!
「Dancing with Nature」がテーマの横長の大きなスクリーンでは、自分のシルエットが花々や珊瑚・海藻などに変身!
インタラクティブな演出で大人も子供も楽しさにはまっていました。
フルーツと花に変身した自分の影が自分の動きに合わせて動きます!
踊るフルーツと花
また、AI合成で自分がフィリピンの美しい花々やフルーツになった写真が撮れるコーナーも大人気で行列ができていました。
私は次の予約の関係で残念ながらできませんでしたが、とっても面白そうなので、気になる方はぜひ体験を。
フィリピンの伝統的なマッサージ体験もありますが、こちらはタイミングによりますが予約は難しいかもしれません。
スタンプを押して建物を出ると、こちらも他のアジア系パビリオン同様、パビリオンを出ると美味しい匂いが…。
テイクアウト専門のショップでは料理系の他、かき氷のハロハロやドリアンやジャックフルーツなど南国フルーツのアイスも充実してます!
こちらのパビリオン自体は予約不要。
フィリピンのボホール島に住む世界最小のメガネザル「ターシャ」の可愛いスタンプも押せます!
上3つがフィリピンパビリオンで押したスタンプ、下は同じ日に行った他のパビリオンのスタンプ
ある程度まとまった人数が入るので並んでいてもグループでも入場はスムーズだと思います。
異国情緒も楽しめて、学びも楽しさもあるパビリオンでおすすめです!
いかがでしたか?
万博といっても興味を持つものは人それぞれ。
私自身は仕事柄ファブリックに注目したことで仕事にも役立つ知識が沢山増えたので、ますますインテリアへの興味や探求心が強くなりました。
昔のCMのキャッチコピーじゃないけれど「モノより思い出。」
まだ万博に行ったことがなくて、今から行こうかどうしようか悩んでいる方、背中押します!
人気のパビリオンはなかなか予約が取れませんが、とりあえず1度は行ってみてはいかがでしょうか?
万博がなかったら、ただただ暑さやもろもろに負けていたかも….それぐらい毎日に活力をくれる元気の素。
行くたびに一期一会の出会いや経験や新たな学びで心が豊かになりました。
あとは人生最後の万博だと思うので、最後まで楽しんで完走したいと思います。
みなさま、まだまだ暑い日が続きますが、どうぞご自愛くださいませ。
あまんだ・ら・かまんだら でした。
■EXPO 2025 大阪・関西万博で見つけた世界のファブリック <TBLブログ3部作>