もちの旅コラム オーストラリア編


 
 
もちの旅コラム VOL.5
 

【 オーストラリア パース編 】

 

オーストラリアの東海岸にあるシドニーを訪れたことのある方は多いと思いますが、西海岸のパースを訪れたことのある方は意外と少ないかも知れません。つい先日、ゴールデンウィークを利用してパースを訪れてまいりましたので、今回はパースについてご紹介させていただきます。

 

「世界で一番美しい街」 あるいは 「世界で一番住みたい街」

 

そう呼ばれる程に魅力の詰まった街が、パースです。
パースは、私が学生時代にインターンシップで滞在したことがある街です。
暮らしていたのは事実なのですが、あの頃は慣れない環境や言語、与えられた業務になじむのに必死で、ゆったりと構えて暮らしを楽しむという余裕もありませんでした。それに、日本での社会経験がありませんでしたので、パースでの暮らしが日本に比べてどうであるかという部分を深く考えたことも無かったように思います。ですので今回の再訪は、たった5日間でしたが、改めてパースの魅力に気付かされた有意義な機会となりました。 
 
 

- パースの5月、季節は秋です -

 
 
パースは、特に目新しいものは何も無い田舎街です。
ただ、街並みはとても素敵です。イギリスからの移民の影響をたっぷりと受け継いだ英国調の街並みが延々と広がり、煉瓦作りの家々の前庭には丁寧にガーデニングされた色とりどりの花が咲き乱れ、まるで絵画から飛び出してきたようなメルヘンな雰囲気です。街にはメープルやユーカリの街路樹がそこかしこに大きく枝葉を広げ、街中を優しいグリーンで包みこんでいます。そんな街路樹をスイスイと渡っていくのは赤、黄、緑など、陽気な色彩のパロットたち。南国ならではのカラフルな色彩で樹々を鮮やかに彩ります。そして何よりも雨量が少なくいつもカラッと晴れ渡るパースの街は、陽の光がまぶしいほどに降り注ぎ、愛らしく緑にあふれた街を輝かせます。 
 
嬉しいのは、西海岸にあるパースでは、どのビーチからもサンセットが見られることです。
夕日を見ながら飲むビールは最高です。15年前、仕事がない日はいつも友人と二人で自転車を走らせて近くのビーチでゆっくりと広い海に沈みゆく夕日を眺めながら、明日はどんな一日になるのかな・・・なんて思いを巡らせることもありました。 
そんな思い出の街を再訪し、学生時代にはわからなかったパースの素晴らしさを改めて肌身に感じる旅をしてまいりました。
 
 

- 散歩道、街路樹が美しい街並みです -

 
 
 

<暮らすこと、働くこと、生きること>

 
 
パースに来て改めて感じたのは日本にいる時の私とパースの人々の間にある「暮らす」ということにおける大きなギャップです。
日々暮らしを豊かにしたいと手元のスマホをフル活用して便利にスピーディーにありとあらゆる物事をコントロールしてきた日本での私の暮らし。それに比べてパースで暮らす人々は、全然スマホを触らないのです。バスに乗っても、歩いていても、カフェであってもどこにいても、ほとんどの人がスマホを触っていないのです。
では何をしているのかというと、隣に座った人に話しかけたり、音楽を聴きながら景色を眺めたり、本を読んだり。
余談ですがバスを降りるとき、パースの人々は必ず運転手に向かって大きな声で”Thank you very much!”とお礼を言うのです。日本では考えられませんよね?私にとってこれらのことは、とても衝撃的でした。 
 
なぜパースの人々がスマホを触らないかということよりも、なぜ私がスマホを触ってしまうのかを考えてみることにしました。買い物をしたりSNSで誰かとつながったりアプリやゲームをしたりと、スマホには様々な用途があります。スマホを通じて世界が広がったり、新たな方法で自分を表現することが出来たり、ワンタッチで膨大な情報に触れることができるスマホの魅力。そんなスマホの魅力に憑りつかれ、私はもはやスマホの大ファンです。でも、だからこそスマホを触らないパースの人々がとても不思議な存在に見えました。どうしてバスに揺られている時間をもっと有効に使わないのかな。ただぼーっと座っているだけで飽きないのかな・・・?
そんな風に考えてしまう私とパースの人々には、時間の使い方に大きな違いがあるような気がします。私の日本での生活は、電車に乗りながらスマホで買い物をし、テレビを見ながらSNSサイトをチェックし、眠る前の少しの時間を動画鑑賞に費やし・・・。パースの人々のように、ぼーっと窓の外の景色を見つめたり、乗り合わせた人とおしゃべりしたり、晴れた日に朝から街路樹の下のベンチで朝食を食べたりという、ある意味ゆとりを感じるようなライフスタイルからはかけ離れているように思います。
 
 

- パース駅です。メープルの樹も紅葉して秋の彩です -

 
 
これは15年前、私がパースに滞在していた頃からなのですが、パースではお店が平日は17時30分に閉店するんです。日照時間が長く、夏は20時まで明るいパースの街に住む人々は、まだ日も高いうちに店を閉めて何をしているのかというと、何とお気に入りのワインと軽食を携えて、近くの公園を家族で訪れ、シートを広げてワインを飲みながら楽しそうにその日一日にあった出来事をおしゃべりするのです。
ですから、パースが一望できる観光名所でもあるキングスパークは、夕方頃になると整備された芝生の上に沢山の家族連れが集まってくるのです。1日24時間は平等なはずなのに、私とはあまりにもその時間の使い方が違います。

 
 
「え、もう店閉まってるの??もっと頑張ってよ。。」
 
 
と、15年前の私は思いました。みんながこんな感じだから経済的にも発展しないんじゃないかな・・・なんて、大きなお世話だと叱られそうなことまで考えたりもしました。
 
 
でも、今回の滞在中、幸せそうにのびのびと自然な笑顔で暮らしているパースの人々を見ているうちに、やっぱり人々はこうあるべきなのではないかと思いはじめました。自分自身のために使える時間が、人々を豊かにするのではないかと。
それに、パースは経済的にも決して悪くないんです。時間にゆとりのある生活をしているにも関わらず、パースがある西オーストラリアの平均賃金は2017年度$10,020で、円換算(85円/豪ドル)すると約850万円となります。一人あたりのGDPも、日本の2017年度の417万円に比べてはるかに高い約819万円という数値です。(※西オーストラリア州の一人あたりGSPを参照しています。)
短い時間、きっちりと成果のある仕事をこなし、残った時間は消費に費やすことで経済バランスが取れているのでしょうか?
パースの人がスマホを持っているにも関わらず、あえて触らないのは、スマホよりもっと自分を豊かにしてくれるものの存在を知っているからかもしれませんね。
 
 

- 週末にしか開催されないフリーマントルの市場。週末は大道芸人が出し物をしたり、生演奏のバンドが路上に出現し、沢山の人でにぎわいます。 -

 
 
日本において私たちが多くの時間を費やすのは「仕事」ですよね。私たちの仕事は、人々の暮らしを本当の意味で豊かにしてきたのでしょうか。
仕事に時間を取られ過ぎて、豊かさを感じられるような時間を過ごせていない人もいるのではないか・・・。そんな疑問が浮かんできました。
そもそも仕事は、仕事としてサービスを提供する側と提供される側の双方を豊かにするべきだと思います。
そしてその豊かさとは、物質的な豊かさでだけではなく、幸福度をも指すべきだと思うのです。

 

日本での私の以前の生活は仕事に費やす時間がほとんどで、仕事の後の楽しみなんて、ビールを一杯飲みながらテレビを見るか携帯を触る程度でした。あまりにも忙しく、残業と早出の繰り返しで寝る時間も十分に取れないような時は、布団の中にいる時間が一番幸せだと本気で思っていました。
一生懸命仕事をした結果、心から喜んでいただけるお客様のお顔を拝見すると、確かに元気が出ますし、やりがいを感じます。それでも、長時間仕事に追われて疲弊しきっている中では、そんな特効薬にも限度がありますよね。
いつしか目の下をクマだらけにして、あたたかい布団に早く入りたいと願いながら仕事をしている自分に嫌気がさしたことを思い出しました。

 
 

かつてはそんな毎日でしたが、今の仕事を始めてから私のライフスタイルは大きく変化しました。遅くても19時には退勤できるようになったのです。会社の帰り道にちょっと一杯同僚とお酒の席を楽しんだり、早めに帰って掃除や洗濯をしたり、ブラブラとウィンドウショッピングをしてみたり、ジムに通ってみたり。これまでは休みの日にしかできなかったことが仕事終わりにできるようになり、休日にはイベントに参加したり、旅行を楽しんだりと、違う時間の使い方ができるようになりました。だからといって、仕事をさぼっているかと言いますと、そうではありません。時間に限りがあるため、効率も重視しながら結果に繋げられるるよう、これまで以上に仕事時間の使い方に厳しく取り組んでいます。
それに、心身に以前よりも余裕があることで、自らの不調や精神的な不安に気を取られることもなく全力で仕事に向かって頑張ることができるんです。
 
 

それでも周囲を見渡せば、まだまだ仕事が生活の中心で、プライベートな時間を持てない人たちも沢山いらっしゃいます。女性の社会進出が進み、男性だけでなく女性も遅くまで仕事をして、遅い時間の電車に揺られながらスマホを操作していますよね。たまの休みにはゆっくりしたいと寝てばかりの旦那さんにイライラする奥様。
自分自身に投資する時間も余裕もなく、おじさん化する女性の皆様・・・。
仕事を続けることで結婚や出産を諦めているケースもあるようです。
日本人の求める品質の高いサービスを提供するために、日々遅くまで働き詰める人々ですが、そんな風に身を粉にして働く人々もまた、一歩会社を出れば何かのサービスを利用する側の立場に変わります。
私たちの仕事の多くは、人々のライフスタイルに合わせてサービスを提供しているはずですから、日本で働く多くの人々のライフスタイルがこのような状態ですと、提供するサービスもそういった人々に合わせたものになっているはずです。つまり、仕事や家事に追われて時間の無い多くの人々のための隙間時間をちょっと豊かにするためのサービス・・・例えば「スマホゲーム」や、時間がない人々に向けた「時短」がウリのサービスなどです。

 
 
「翌日には手に入ります。」
 
「時間をかけて選ばなくても、コンピューターが選んでくれますよ。」
 
「会わなくても相性バッチリの人とマッチングさせますよ。」
 
「忙しいあなたの代わりに●●をやりますよ。」
 
 
そんなサービスです。
その「時短」サービスを利用することによって手にした時間は、きちんと家族との時間や自分自身の時間に使われているのでしょうか。捻出された時間が再び仕事に費やされているとしたら、何という悪循環かと思ってしまいますね。
 
 

- フリーマントル行きの電車で行くことができるクレアモント駅から徒歩10分のスワン川沿いにある桟橋です -

 
 

人々が幸せになるためにすべきことは、もしかしたらもっとシンプルな引き算なのではないかと考えました。
例えばパースの人々のように、店の短い営業時間やちょっと物足りないなと感じられるようなサービスにも寛容になるだけで、人々の暮らしは劇的に豊かになるのではないか・・・。
「ちょっと物足りない」「もう少し便利だったら」「もう少し遅くまでやってくれたら」を補うために犠牲になっている多くの人々の多くの時間が、仕事を終えた後の幸せな消費や家族と過ごす時間に使われるようになれば、私たちはもっともっと豊かになれるのではないか・・・。
仕事と私生活のバランスがパースの人々のようになれば、今度は幸せに暮らす人々に向けた幸せな仕事がもっともっと増えたりするのではないか・・・。
早く届くものや隙間時間に必要最低限のことをこなせるようにするものではなく、ゆとりある時間をもっと豊かにしてくれるサービスを提供する仕事。自分が本当に過ごしたい時間を過ごせるようになるサービスを提供する仕事です。

 
 

これは、私の個人的な意見ですので、お気に障ってしまったら申し訳ございません。
でも、皆が「せーのっ」で、お仕事を早く切り上げるようになれれば、もしかしたら素敵な変化が訪れるのかも知れないなと、ついつい思ってしまったのです。

それだけ、私にとってはパースの人々のライフスタイルが魅力的で幸せそうに見えました。

 
 

<パースの人々>

 

ここで、少しだけ優しくおおらかで魅力的なパースの人々の様子をお伝えさせていただきます。

 

 

飲食店で

パースで利用した飲食店は、どこも素敵なサービスを提供してくれます。
 
 

- 陽気なマスター。フリーマントル駅のレストラン街にあるブルワリーが併設された素敵なレストランバーにて -

 
 
「どうしてパースに来たの?いつパースに来たの?どれくらい滞在するの?えぇ!そんな短い期間じゃ足りないわよ!好きなビールの銘柄は何?なんですって?ヴィクトリアビター?!キー!!帰って頂戴。ここにはもっと美味しいビールしかないのよ!」

 

あまりにも自然なトークで接客をする店員さん。接客しているつもりはもしかしたらないのかも知れないと思うくらい、とにかく自然に、可愛い身振り手振りを交えながら軽快に話しかけてくれます。

 

「じゃあね、テイスティングしてみたら?1人$10だけど、3人で1人分をシェアしたらいいわよ!」

 

そういって、小さめのグラス10個になみなみとビールを注いでくれます。
 
 

「感想、教えてね!」
 
 
そういってキュートな笑顔でトレイを差し出すお兄さん。
とても素敵な接客です。
 
 

- お兄さんおススメのカンガルー肉の串や、ピザをいただきました -

 
 
食べ始めてしばらくすると同じお兄さんがまたテーブルにやってきて
 
 
「どう、いけてる??グー!!」
 
 
と、気にかけてくれます。なんと素敵な対応でしょう。嬉しくなってしまうのは、心から楽しそうに応対してくれるからだと思いました。

 
 
 
 

- 物価の高いパースで、これだけのビールが全部で850円は、大サービスです -

 
 
 

観光中に

見るもの全てが新鮮な私たち。あちらこちらでスマホ写真を撮っていましたが、通りすがりのオージーはいつも

 

「撮ってあげるよ?」

 

と、声をかけてくれました。
もしかしたら英語が通じないかもしれない日本人に、そんなことは全く思いつきもしていないような素振りで話しかけてくれるのです。色んな角度で撮影してくれて、

 

「どう?いい感じ?」

 

と心配そうに画面をのぞき込みます。
急ぐ様子も見せず、写真の出来栄えだけを心配しているようで、

 

「とても素敵です!ありがとうございます!」

 

と答えると、嬉しそうに

 

「良い一日をね~」

 

と、笑顔で去っていきました。

 
 

- ジンジャークッキーに、オレンジピール入りのショコラボール。オーストラリアには沢山のカフェがあり、ゆったりとくつろぐオージーたちの憩いの場になっています -

 
 

日本ならどうでしょう。少なくとも私はよほど時間のある時しか声をかけないと思います。

思いやりにあふれる人が多いのがパースの印象でした。

 

<最後に>

 

本当はパースの観光名所や穴場スポットをご紹介するつもりでしたのに、このような内容になってしまいました。
でも、パースには沢山の日本人の留学生の方やお住まいの方もいらっしゃって、情報もネットにかなり溢れていますので、そういったオススメスポットは今回は割愛させていただきます。

 

もしパースを訪れる機会がありましたらぜひ観光だけでなく、そこに暮らす人々のライフスタイルにも注目して楽しんでみてください!

 

最後に、今回私が訪れたパースが、オーストラリアの西海岸にあることにちなみまして、
西海岸インテリア特集を、ご紹介させていただきますね。

 
 

- びっくりカーテンでしか買えないオリジナルデザインの西海岸インテリアシリーズ -

 
 

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます!
次回は何の旅の話をしようか、今から焦りまくりです(笑)
 
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<おまけ>

 
 
滞在中のお写真をご紹介します~(●´ω`●)

 

- 家族連れで滞在の場合、宿泊はホテルではなくコンドミニアムがおすすめです。部屋が広く、生活に必要なもの(キッチン、洗濯機、冷蔵庫)がすべてそろっています。スーパーで購入したオーストラリアの美味しい食材を使って食べたいものを調理することができます。 -

 

 
- このコンドミニアムには、寝室が2部屋、リビングとダイニングキッチン、ガーデンテーブルのあるバルコニーがありました。一人当たりの宿泊費用は1泊6000円です。毎日クリーニングが入ってくれて、食器を洗ったりリネンを交換してくれたりします。 -

 

- お昼はバルコニーで食べたりもしました。 -

 
 

- 1日は観光に費やしました。砂丘の上から滑り落ちるサンドボードです -

 
 

- ピナクルズは西海岸で最もポピュラーな観光名所。奇岩が自然に発生した神秘的な砂漠を体験できます。 -

 
 

- コアラ、カンガルーは外せませんね! -

 
 

- ち、近い!(笑)カンガルーの人懐っこさに感激です! -

 
 

- フリーマントルのカモメは人を怖がりません。こんな至近距離で撮影させてくれました(笑) -

 
 

- キングスパークは、パースの街を一望できる最高のスポット。西オーストラリアのワイルドフラワーが一度に見られる素晴らしい公園です。樹齢750年のバオバブは、圧巻です! -

 
 

- パースのシティ内にはマーガレットリバーで作られたチョコレートショップが♪お土産などに最適です -

 
 

- フリーマントルは港町。週末のマーケットが盛んなことで有名ですが、海に出てカフェでのんびり過ごしてみるのも素敵ですよ -

 
 

- フリーマントル、写真スポット?? -

 
 
【もちの旅コラム まとめてみるには以下からどうぞ!!】
 
仕入れの旅 モロッコ
 
 
15年ぶりのオーストラリア・パース
 
 
藍染を仕入れる旅 中国・昆明編
 
 
仕入れの旅 インドネシア・バリ編
 
 
インドの旅 <前半>
 
 
インドの旅 <後編>
 
 
インテリアコラム ボーホースタイル編
 
 
ドイツ・フランクフルトの旅
 
 
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記事/撮影 モチ